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横浜DeNAベイスターズ、26年ぶり日本一!「下克上」から見えた組織の進化
2024年のプロ野球は、横浜DeNAベイスターズが日本シリーズを4勝2敗で制し、チームとして26年ぶりの日本一を成し遂げて幕を閉じた。セ・リーグ3位からのクライマックスシリーズ制覇、そして日本シリーズ優勝という、まさに「下克上」の完遂である。
ベイスターズはポストシーズンで、クライマックスシリーズと日本シリーズを合わせ14試合で10勝4敗と圧倒的な強さを見せつけた。レギュラーシーズンを遥かに凌駕する戦いぶりだったと言える。元々、セ・リーグ屈指の打力を誇るチームだが、今シーズンはチーム防御率が5位、チーム失策はリーグ最多と、投手力と守備には不安を残していた。
ところがどうだろう。クライマックスシリーズを含めたポストシーズンでは、投手陣が安定し、守備も堅実だった。そして、自慢の打力は遺憾なく実力を発揮したのだ。
切れ目のない攻撃陣と「異常な成長」
キャプテン牧を筆頭に、首位打者オースティン、宮崎、佐野ら、実績組は安定した活躍を見せた(以下、選手名は敬称略)。そして、今年ブレイクした梶原も結果を出し、さらにシーズン中は力を発揮しきれなかった戸柱、成長著しい森敬斗、そして筒香の復活といった、予想を上回る選手の躍動があった。極めつけは日本シリーズMVPに輝いた桑原の輝きである。
今、9人の野手の名を挙げたが、まさに「切れ目のない打線」とはこのことだろう。対戦相手にとっては、常に警戒を強いられるため、フォアボールが増え、失投も誘発される。そうなれば、塁にランナーが溜まり、痛恨のタイムリーを許すことになる。セ・リーグのクライマックスシリーズでは、阪神も読売もこの打線の餌食となった。「抑えるところがない打線」とは、まさにベイスターズのことだった。
しかし、日本シリーズの相手はパ・リーグの覇者、福岡ソフトバンクホークスである。戦前の予想では、リーグ戦で91勝を挙げ、貯金42を誇るホークスが圧倒的に有利とされていた。一方のベイスターズは、71勝、貯金わずか2のチーム。そんな前評判やレギュラーシーズンの成績をもろともせず、ベイスターズはホークスを飲み込んだのだ。
なぜ、このような番狂わせが起こったのか?それは、ベイスターズがポストシーズンに入り、「異常なまでの成長」を遂げたからだと考えられる。元々持っていた選手個々の実力が、この短期決戦の舞台で一気に開花したとも言えるが、これほど複数のメンバーが同時期に大活躍できるというのは、もはや「成長」という言葉以外に適切な表現が見つからない。横浜DeNAベイスターズの2024年のスローガン「横浜進化」。まさに、ポストシーズンで成長し、真の進化を遂げたのだと確信している。
投手陣についても触れておこう。リリーフの坂本と中川の目覚ましい成長、そして伊勢の復活があった。ホークス打線は完全に押し込まれ、彼らはまるで相手を見下ろすかのように堂々と投げ込んでいるように映った。
究極の短期決戦で「伸びしろ」を伸ばす難しさ
ポストシーズンで明らかに強さを増したベイスターズ。10月に入ってから“伸びしろ”を伸ばし、本来の力を最大限に発揮し、成長と進化を遂げて勝ち進んだ。実は、これこそが最も難しい点である。
ベイスターズがポストシーズンで対戦した3チーム(阪神タイガース、読売ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークス)の状況を見てみよう。
* 阪神タイガース: クライマックスシリーズ前に監督退任が発表され、勢いを失い尻すぼみで終わった。
* 読売ジャイアンツ: 攻守の要である吉川尚輝の怪我による欠場が大きく響き、戦力ダウンを補えなかった。
* 福岡ソフトバンクホークス: 成熟したチームゆえに、自らの試合の形に持ち込めず、焦りが見られた。
そもそも、ポストシーズンはそのシーズンの集大成であり、これまで培ってきた勝ち方で戦っていくものだ。それが、試合を経るごとに成長してくる相手と戦うというのは、なかなか経験できることではないだろう。単なる「好調」ではない。「試合ごとに強くなってくる相手」なのだ。だからこそ、このベイスターズの10月~11月での成長・進化は、これまでの常識では考えられないことだった。
2025年シーズン、他チームはどう戦うのか?
それでは来シーズン、他チームはリーグ戦での戦い方を変えてくるだろうか?例えば、10月以降の成長を期待し、意図的に「伸びしろ」を抱えたままレギュラーシーズンを終える、などということがあり得るのだろうか。
私の答えは「否」である。これには2つの理由がある。
1. リーグ優勝を目指すことに全力を注ぐから: 優勝を目指さなければ、そもそも3位以内には入れない。セ・リーグでは読売が優勝したが、今年は歴史的な混戦だった。広島の失速があったとはいえ、ベイスターズも優勝を狙ってきた中での結果が3位であったと言える。
2. 最後までギリギリの戦いをしているため、余力がないから: レギュラーシーズンはそれだけ必死の戦いであり、ポストシーズンでの伸びしろを期待して終える、などという余裕はありえないだろう。
では、なぜベイスターズにのみ、ポストシーズンでの異常なまでの成長と進化、そして躍進があったのか。これは内部の人間ではないため断定はできないが、チームとしての力が一段上がったとしか考えられない。個々の能力が最大限に発揮されながら、チーム状態が向上し、結束力によって束として強くなったのだ。これは、三浦監督をはじめとするマネジメントの力と、それに応えた選手、そして裏方の方々も含めたチーム全体の結束力に他ならない。
チームは生き物:管理者がすべきこと
ここで、改めて思うのは、チームは生き物であり、常に同じ状態ではないということだ。メンバーが力を発揮し、勝利という成果を成し遂げるために、管理者や選手はどのように振る舞うべきなのか。
ベイスターズは、「このように戦っていこう」という明確なベクトルに対し、チーム全員が深く理解し、それを実行していたのだと思う。
26年ぶりの日本一、そして感動のラストシーン
この場で改めて賛辞を贈りたい。
横浜DeNAベイスターズ、そしてファンの皆様。
26年ぶりの日本一、本当におめでとうございます。
最後に、日本シリーズで私が特に感動した場面をお伝えしたい。
ベイスターズの胴上げが終わった後、ホークスのメンバーはホークスファンが陣取るレフトスタンドに近づき、整列して一礼した。これはよく見かける光景だ。しかしその後、ホークスのメンバーはなんと、ライトスタンド、つまりベイスターズファンの応援の中心地にまで近づき、整列して一礼したのだ。
これは、なかなか見られることではない。敵味方関係なく、最後まで試合を見届けてくれた全てのファンの皆様に、感謝の気持ちを伝えたかったのだろう。そんなホークスのメンバーの心意気に、ベイスターズファンが応え、万雷の拍手が贈られた。その拍手は、やがて球場全体に広がっていったのだ。
これほど美しい光景があるだろうか。
試合である以上、必ず勝者と敗者が生まれる。大一番になればなるほど、敗者には残酷な現実が突きつけられる。しかしこの瞬間、グラウンドからスタンドへ「野球が好きだ、ありがとう」という純粋な気持ちが伝わり、満員の横浜スタジアムを温かく包み込んだのだ。
改めて、野球は本当に素晴らしいスポーツだと感じさせてもらった場面だった。
感動をありがとうございました。
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