球界の元旦、2月1日という特別な日
2月1日。
球春到来という言葉の裏には、まだ誰にも見えない時間が確かに流れている。
日本プロ野球の各球団が一斉に春季キャンプを開始するこの日は、球界にとっての「元旦」であり、一年の物語が静かに動き出す日だ。
3月末の公式戦開幕に向けた、約1か月間のキャンプ。
選手たちは南国の地で自らを鍛え上げる。首脳陣は今シーズンの命運を握るチーム作りに没頭する。
2月下旬からはオープン戦も始まる。そこは、選手個々にとっては熾烈な「競争」の場であり、首脳陣にとっては「選手の見極め」の場。さらに他球団にとっては、開幕を見据えた「戦力分析」の場にもなる。
この2月1日を境に、前年の順位や成績は、もはや関係ない。
ファンは「今年こそは」という一心で、推し球団や選手への想いを新たにし、キャンプの様子を見守るのだ。
特に今年は、3月にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の開催を控えている。
大会そのものが楽しみなのはもちろんだが、ファンにとっては、日本代表に選出された自チームの選手に対し、どこか「親のような」複雑な心境で思いを巡らせる時期でもある。
「世界を相手に活躍してほしい」と願う一方で、ケガやアクシデントは起きてほしくない。
さらには、WBC公式球とNPB公式球との規格差、コンディション調整の難しさが、レギュラーシーズンの成績にどのような影響を及ぼすのか。
期待と不安が交錯するなかで迎えるのが、2月1日という日なのだ。
また、キャンプ中に行われる紅白戦も、大きな醍醐味の一つである。
勝ち負け関係なく、攻守ともに自チームの選手だからこそ、一挙手一投足をじっくりと観察し、その姿勢やプレーを見届ける時間は、たまらなく楽しい。
そんなファンの想いを下支えしてくれるのが、CS放送を中心としたキャンプ中継だ。
平日は仕事で観られないファンも多いだろうが、夜に録画をゆっくり見返す時間は、まさに至福のひとときといえる。
見えない場所で積み重ねられる「孤独な準備」
キャンプ中継に映る、泥にまみれてノックを受ける若手の必死な表情や、黙々と練習をこなす主力選手の姿。
紅白戦で結果を残して歓声を浴びる選手もいれば、思うような内容を示せず、悔しさをにじませる選手もいる。
ファンとしては、つい目に見える結果や評価に一喜一憂してしまう。
「調子が良さそうだ」「今年は期待できるかもしれない」。そんな言葉が、自然と頭をよぎる。
しかし、キャンプ中継を見ているうちに、次第にある感覚を覚える。
私たちが見ているものは、選手たちの日常の、ほんの断片に過ぎないのではないか、ということだ。
シーズン公式戦という「実力を発揮する場所」は、テレビに映る派手なシーンや、キャンプ中継での映り姿だけで成り立っているわけではない。
その裏側には、誰の目にも触れない膨大な準備と試行錯誤がある。
チーム全員が同じ練習メニューに取り組んでいるとはいえ、それをどう受け止め、どう消化するかは、あくまで個々の選手に委ねられている。
同じ時間、同じ環境であったとしても、そこに込める意識や課題設定は、人それぞれだ。
それはまさに、ひとり一人が自分自身と向き合う「孤独な準備期間」と言えるだろう。
中継が入り、ファンが見守る練習は、キャンプ全体から見れば、ほんの一場面に過ぎない。
画面に映らない時間の方が、むしろ圧倒的に長い。
全体練習が終わった後、誰もいなくなった室内練習場で、マシン相手に独りバッティング練習を繰り返す選手。
宿舎に戻ってから、鏡の前で投球フォームをミリ単位で修正する投手。
ケガからの復帰に向けて、リハビリメニューを続ける選手。
そこには歓声も、評価もない。
誰かに褒められることもなければ、すぐに数字として結果が表れるわけでもない。
ただひたすら自分自身と向き合い、違和感を探し、仮説を立て、修正を繰り返す。
この静かで、地味で、ときに心が折れそうになる時間こそが、シーズンで見せる「一瞬の輝き」を生み出す原石となるのだと、私は思う。
公式戦で放たれる一本のヒットや、勝負どころで決まる一球は、偶然の産物ではない。
それは、誰にも見られない場所で積み重ねられた無数の準備が、ようやく表に現れたものに過ぎない。
球春に重ねる、ビジネスにおける自分自身の準備
これは、私たちが身を置くビジネスの世界でも、まったく同じではないだろうか。
新しいステージやチャレンジを控えている時こそ、このような「孤独な準備期間」が重要になる。
華々しい舞台で成果を出すことに目が向きがちだが、プロとして差がつくのは、誰も見ていない時間にどれだけ自分と向き合い、没頭し、自分に合った「型」を磨けたかである。
そして、周囲からの「見極め」に耐えうるだけの自分をつくり上げること。
さらには、他者との比較だけではなく、自分自身の中で「克己」し、プロとしてのビジネス像を固めていくことだ。
期待と不安が交錯するのは、本気で挑もうとしている証拠である。
プロ野球選手たちが南国の太陽の下で、己の心と身体と対話しながら一歩を踏み出すように、私もまた、自分自身のビジネス像を丁寧に磨き上げていきたい。
球春到来。
選手たちに負けぬよう、私自身もこの2月を、熱く、そして緻密な「孤独な準備」の月にしていく。
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