集客で悩んでいませんか?
サロンを経営していて「思うように集客できていない」「検索サイトに頼りすぎている」と感じることはないだろうか。
中小企業診断士として、理美容サロンやエステティックサロンの経営支援に携わる中で、最も頻繁に挙げられる悩みがこの“集客”である。
実際、自店のホームページを持っていない、あるいは活用できていないサロンは決して少なくない。集客の多くを美容検索サイトに依存している店舗も多く見受けられる。これらのサイトは実績・ユーザー数ともに豊富で、高い集客力を誇る一方、広告費の負担は小さくなく、特に個人経営の店舗にとっては経営上の重荷となっている。
こうした現状を踏まえ、美容検索サイトだけに頼るのではなく、自店のホームページや独自メディアを育てていくことが、着実な効果を生む集客戦略として見直されつつある。
ここでは、「地域に選ばれるサロン」になるための2つの戦略を紹介したい。
戦略①:尖ったポジショニングを築く
美容検索サイトには、「何でもできる」と謳う店舗が多数存在する。例えば、フェイシャル、ボディ、ヘッドスパ、リラクゼーションと幅広い施術を展開するエステティックサロンは、一見魅力的に映る。しかしながら、サービスの幅が広がるほどに店独自の“らしさ”が曖昧になり、他店との差異化が困難となる。その結果、「特徴がない店」として埋もれてしまう恐れがある。
だからこそ、“尖ったポジショニング”の確立が重要である。
例として、女性理容師のみが施術を行う男性専門のアイブローサロン(眉毛サロン)がある。開業当初は「ニッチすぎるかもしれない」との不安を抱いていたが、女性目線による提案、理容師ならではの眉カットと顔剃りによる施術スタイルが支持され、“自分らしい眉”を求める30代〜40代男性を中心に口コミで広がった。半年後には予約枠の8割が定期顧客で埋まり、「メンズ眉カットならこの店」と認知されるまでに地域に定着した。さらに「あなたらしさ」を反映したヘアスタイル提案も行い、眉カット+ヘアカットのセット利用者も全体の2割に達している。
この成功の背景には、私が士業向け塾で学んだ「3つのイチ」の考え方がある。
- 一点集中:特定分野への深いフォーカスは印象と専門性を高め、全面展開につながる。
- ナンバー1:テーマや地域において第一人者として認知されること。
- 一番乗り:未開拓分野で先行者としてポジションを築くこと。
この眉毛サロンは、「一点集中」により施術内容を尖らせたことで、ヘアカット領域へと展開した。
そして「ナンバー1」と「一番乗り」の両面において、女性理容師による施術により「女性目線でのカッコ良さ」を実現し、さらに理容師だからこそ提供できる「うなじも含めた顔全体のシェービング」を通じて、地域における唯一無二のポジションを築いている。
ポジショニングを明確にすることで、店舗の“軸”が定まり、顧客に価値が伝わりやすくなる。専門性が明確であれば、紹介される機会も増え、口コミの質も自然と高まっていく。
戦略②:「見つけてもらえる仕組み」をつくる
次に重要なのが、そもそも顧客に“見つけてもらう”ための情報発信である。
あるエステサロンでは、「オーダーメイド」というコンセプトを打ち出した。これは、顧客が抱える悩みと「ありたい姿」を最大限に引き出すためだ。そもそも、エステティックサロンには特有の「メニューと効果が分かりにくい」という背景がある。
そこで、「あなたらしい美しさ」や「あなたのライフスタイル」という観点と20年の施術経験から、ホームページを刷新したうえでインスタグラムおよびLINEと連携。その施術プロセスや店主の思いをブログ記事として展開していった。これを継続していくことで読者の共感を生み出し、結果として、Google検索で「オーダーメイドエステ+地域名」が自然検索2位に表示され、初回来店の3割が検索経由での集客となったのだ。
検索キーワードは、以下のような2語の組み合わせが主流である。
・ワード①(悩み・施術名):シミ取り、シワ取り、ほうれい線、痩身、ヒゲ脱毛、眉カット、VIO、オーダーメイド
・ワード②(地域・属性):地域名、駅名、性別、年代、イベント(卒業式、結婚式など)
検索例:
シミ取り 新宿
ほうれい線 荻窪駅
痩身 結婚式
ヒゲ脱毛 30代
眉カット 男性
VIO 男性
このような「悩み+地域・属性」の組み合わせは検索習慣として定着しており、自店の情報をこれに合わせて発信することで、“見つけてもらう”可能性が格段に高まる。
ただし、検索結果の上位には広告枠や大手チェーンの店舗が並ぶため、自然検索で選ばれるにはより戦略的な設計が求められる。
そこで力を発揮するのが前述の「尖ったポジショニング」である。お店の思いや理念がコンテンツに丁寧に込められていれば、「この店、気になる」と感じてもらえる。こうして共感を生み、価格競争に巻き込まれることなく、信頼される顧客層を築くことができる。
地域に愛されるサロンとなるために
これら2つの戦略は、どちらもサロンが「地域に根づいた存在」となるための柱である。
現場では、こうした支援を一つずつ丁寧に積み重ねている。日々奮闘する経営者の姿を近くで見るたび、「少しでも力になりたい」「ヒントを届けたい」という思いは強まるばかりである。
もしこの文章が、次の一歩を踏み出す勇気となり、店舗づくりの方向性を照らすものとなれば、それは支援者として何よりの喜びである。
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