積立投資ブームの今こそ見直したい、変額保険販売「3つの本質」

ここ数年の物価上昇を経て、投資熱が高まってきていると感じるのは筆者だけではないだろう。 2019年に金融庁の金融審議会が老後生活で2000万円不足すると試算して物議を醸した「老後2000万円問題」から6年余り。「貯蓄から投資へ」の流れは加速し、積立投資が活発化している。NISAやiDeCoの制度拡充もその一環といえよう。

生命保険業界においても、変額保険を販売する会社が増え、顧客の選択肢は大きく広がった。そこで今回のブログでは、積立投資ブーム下における生命保険販売の3つのポイントをお話ししたい。 というのも、私は保険会社時代に変額保険推進のプロジェクトリーダーを複数年務め、その企画運営やセミナー等を通じて、社員や代理店の皆様に伝え続けてきた思いがあるからである。

他の積立投資と「コスト」で戦わない

第一に、変額保険を販売する際、他の投資商品と「コスト」で競ってはならない。 投資意識が高く勉強している顧客ほどコストを重視する。変額保険の信託報酬は、他の積立投資に比べ安価であることが多い。信託報酬の安さについて、変額保険同士の比較ならメリットにはなるが、他の積立投資とのコスト比較の話になってしまうと、話が非常に複雑化(ややこしく)してしまう。

もちろん、変額保険の販売にあたっては、信託報酬、保険関係費用、解約控除、年金受取費用といった各費用の正確な説明は不可欠だ。しかし、変額保険の保険料には死亡保障のためのコスト(保険関係費用)が含まれているため、純粋な積立投資とトータルコストで比較すれば、どうしても勝ち目は薄くなる。さらに、保険会社は保険関係費用のすべてを公開しているわけではないため、コストのみを焦点にすると、お客様が真に満足される回答を出すことは難しい。

ここで訴求すべきはコストの安さではなく、「積立投資の仕組みを導入した、インフレに強い生命保険」であるという点だ。 生命保険は長期契約が基本であり、とりわけ死亡保障は何十年も先に保険金として機能する。物価上昇時に価値が固定されている「定額保険」の弱点を補い、将来届ける保険金の価値を守る「インフレヘッジ機能」こそを前面に出すべきである。 なお、現在販売されている変額保険の多くは「増加保険金額」がないタイプだが、死亡保険金額が増額しない分、運用成果は責任準備金に充当される。そのため、解約返戻金額、払済保険金額、終身保険移行時の原資、そして満期保険金額において、しっかりとインフレヘッジの機能を発揮するのである。

さらに、変額保険は積立期間中の運用益が非課税となる。これはNISAやiDeCoと同様の仕組みであり、非課税による複利効果を最大限に享受できることも、資産形成における大きな利点といえる。

「保険は四角、積立は三角」という原点

第二に、保険業界では当たり前のことだが、「保険は四角、積立投資は三角」という概念を改めて強調したい。
積立投資は時間をかけて資産を積み上げる「三角」の形だが、生命保険の本来の機能は、契約した瞬間に満額の保障が準備される「四角」の形をしている。 この「万が一の際、即座に家族を経済的にお守りする」という機能は生命保険最大の強みである。当たり前すぎるがゆえに、この本質を伝えきれていないケースも多いのではないだろうか。

「継続」を担保する、生命保険だけの仕組み

第三に、積立投資は「健康で働けて収入があること」が継続の前提である。もし大病を患い収入が途絶えてしまったとき、積立投資を継続できるだろうか。

変額保険には、生命保険会社にしか提供できない「P免(保険料払込免除)」という特則がある。がん等の所定の状態になった際、保険会社が以降の保険料を肩代わりし、運用の継続を保障する仕組みだ。

積立投資においては、目標とするターゲットやタイミングで資産を現金化する「出口」が何より重要である。大病の罹患による不測の事態によって、本人の意図しない時に積立を断念せざるを得ない状況は、最も避けなければならない。そのリスクを回避し、資産形成の完走を支えてくれるのが、このP免という仕組みなのである。

しかし、すでに「P免なし」の変額保険に加入している方や、新NISA等で自ら投資を行っている方に対しても有効な手法がある。それが「就業不能保障保険」との組み合わせだ。

例えば月額10万円の給付設定をしておけば、がん等の所定の状態になった際、非課税で受け取れる月額給付金を「積立投資の継続原資」に充てることができる。 しかしながら、月額給付金10万円では生活保障として十分とは言えない。実際の給付金設定は、個々人の生活費を加味して設計する必要があることは言うまでもない。

このように「資産形成の継続」という視点で対話を進めれば、仮にお客様のコスト意識が高く変額保険の成約に至らなかったとしても、積立投資を補完する「就業不能保障保険」の成約へと繋げることができる。これこそが、全方位から顧客を守るプロの仕事である。

まとめ

変額保険の販売において大切なのは、単なる運用実績の優劣を語ることではない。
生命保険の本質である「死亡保障」と、人生における「働けなくなるリスク」に向き合うこと。プロとしてこの二点をお伝えすることこそが、顧客の未来を守ることに繋がるのである。

人生には、予期せぬ突然の雨が降ることもある。そんな時、そっと傘を差し出し、お客様の暮らしと未来を守り抜くこと。それこそが生命保険の精神であり、私たちプロフェッショナルの使命なのだ。

中小企業診断士 小池俊

中小企業診断士 小池俊

経営コンサルタント/保険業専門成長コーチ

経営コンサルタント/保険業専門成長コーチ
トラリアル中小企業診断士事務所 代表
経済産業大臣登録 中小企業診断士(登録番号426896)
中小企業庁認定 経営革新等支援機関(認定支援機関番号109313005610)
公益財団法人 日本生産性本部 認定経営コンサルタント(認定番号241008)
一般財団法人 日本能力開発推進協会認定 上級心理カウンセラー
株式会社かんき出版 登録研修講師
徳島出身、東京在住
野球好き
阪神タイガースファン

アクサ生命にてCAP(代理店担当社員)MVPを3度受賞。東京海上日動あんしん生命では、東京の支社を日本一に導く。
通算1000社以上の保険代理店を支援し、1000社以上の法人契約営業に同行。
営業エキスパートとして実績を積み、研修講師として経験を重ねる中で、大腸がんを罹患。
闘病を通じて、「人を育て、次世代に残すこと」の重要性と、「がんに罹患した経営者の不安」という課題に向き合う。
「保険で給付金を受け取れても、その後の会社はどうなるのか?」
その問いに向き合うべく、中小企業診断士を志す。 日本生産性本部の養成課程を修了し、2024年5月に独立。
現在は、保険業専門成長コーチ・研修講師として人材育成や組織づくりを支援。また、中小企業の経営支援も積極的に手掛ける。
通算500回以上の研修登壇実績を持つ。

得意分野は営業、研修、マーケティング、事業計画、組織活性化、コーチング、カウンセリング。

志は、企業の発展と働く人の幸せに貢献できる中小企業診断士になること。

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